2022年6月27日月曜日

PDの治療論の執筆は進む 

天気図の上では完全に梅雨明けなんだけどなあ。


反社会性PD

 反社会性PDはディメンショナルな診断ではその顕著なものを抽出することが難しい。何しろ典型的なASPDをディメンショナルに描写すると、たとえば「非社会性、脱抑制、離隔などの顕著な特性を有する人」などとなる。これじゃ何を言っているのかわからない。やはりADPDあるいはサイコパスとしてカテゴリカルに表現されないと彼らの治療については論じられないという所がある。

 反社会性PDの治療は、外来精神療法的なアプローチの効果はないと言われてきた。たしかに純粋なサイコパスとみなされる人たちに個人療法は効果がないと言い切れるであろう(Kernberg, 1984, Melpy,1988,1995,Gabbard p535)。他方では反社会的特徴を有する自己愛パーソナリティ障害の場合は救いがあるとされる(G,443
 一般にASPDは外来環境で衝動を発散する行動のはけ口がある限り、自らの感情に触れようとしないからである(Gabbard p437)。しかし幾つかの報告では入院治療に効果があるとされる(Salekin, et al, 2010)。ただしASPDの入院治療においては厳しい治療構造やルールの順守が要求される。患者が治療構造を破壊しようとする傾向やスタッフの抱く強い逆転移感情がしばしば問題となる。そのため一般病棟にASPDの患者を入院させることには極めて強い配慮と治療的な構造が必要とされる。
一般に不安や抑うつの存在は、治療効果が見いだされるサインと言える。逆に器質的な障害、過去の逮捕歴などは治療効果があまり見られないとされる。

Salekin RT, Worley, C, Grimes RD (2010) Treatment of psychopathy; a review and brief introduction to the mental model approach for psychopathy. Behav. Sci Law 28:235-266, 2010.

また意外なことに、ASPDの薬物治療に関しては、効果のあるものは報告されていない。