この点を踏まえたうえで、Gabbard 先生は、無意識的な連想ネットワーク unconscious associative networks (UAN)という考え方を提出します。これは無意識的に成立している神経の結びつきということですが、それがどの様なものであり、どのように変えていくかということが精神分析の役割であるということです。このUANが意味するのは、人間の頭悩が結局は神経細胞の作るネットワークの産物であり、フロイトもあれから何十年も研究するとしたら同様の結論に至った筈であるということです.フロイトも無意識はある種のブラックボックスであると考えたし、それは私たちが Neural network と呼んでいるものに対して持っている考えとあまりかわらないのです。それにいみじくもユングが行っていた言語連想法はまさに一種のUANであり、フロイトの精神分析はそれに大きな影響を受けているものです。
Gabbard によれば最近の認知科学では、潜在記憶 implicit memory についての研究が盛んであり、これが私たちが気が付かないうちに人の行動に大きな影響を与えていることへの関心がますます高まっています。そこでこの連合ネットワーク association network という考えが注目されているわけですが、それは実は無意識的なファンタジーや衝動、ないしは認知療法で見られるスキーマなどとも関連していることが注目されているのです。