さてではどうして一方では自然科学の様々な分野で多くの研究の成果が挙げられているにもかかわらず、精神医学や精神分析ではその様な発展が顕著に見られないのでしょうか?一つには私たちの心の座である脳があまりにも複雑すぎて捉えどころがないからです。でもやはり脳から出発しなくてはならないでしょう。精神分析を論じるのにどうして脳が出てくるのかとお考えになるかもしれませんが、フロイトが最初にそうしたからです。
考えても見て下さい。今から100年前、フロイトは精神科医であり、新しい心の理論を打ち立てたわけです。フロイトはかなり実証主義的な面を持っていましたから、そして何よりも病理学者でしたから、心としてかなり具体的な仕組みを考えていたわけです。しかし彼が生きた時代は神経細胞を見出すことしかできなかった。そこではファイ、プサイの二種類の神経細胞を分類してそこから心の理論を立てようとした。今は私たちははるかに進んだ脳科学を手に入れているわけですから、それに基づいた心の理論を打ち立てるべきなのです。フロイトはその様な試みを1890年代までは行ってきました。そして結局は挫折してしまうのですが、それが現れていたのが、科学的心理学草稿と言う論文です。そしてそれまで顕微鏡の下で観察されるものに基づきこころの理論を作っていこうとしていたのを一大転換して、脳に関する大きな仮説を設けたわけです。
そしてフロイトが考えたのが以下のよく出てくる図です。
そしてそれをニューラルネットワークの図と重ねたのが以下のものです。