2022年6月6日月曜日

精神科医にとっての精神分析 3

  ところがそれから大きく時代が変わりました。そして様々な理論が台頭し、それらとの相互乗り入れをしています。しかしそれを精神分析を殺さずにそれらとの融合を図っているのがギャバード先生なのです。
 そこでその精神分析の最近の流れを考えると、幾つかのことが言えます。先ほどの多元論的視点がそうでしたが、もう一つはより不可知論的になっているということです。フロイトが星の運航をニュートン力学的に考えるのと同じようにこころを考えたとすると、今は量子力学で、不確定性理論に基づく考えにシフトしている。精神の動きに一つの型などない。いくつかがあるとしてもそれはその時々で微妙に形を変えているのです。そしてその精神分析の流れがモダンになるほど、その不可知論的な特徴が明らかになります。それがネガティブケイパビリティという概念にも表れています。
 そこで注目されるのが、「治療機序の主要な様式は、患者が分析家の心の中に自分自身を感じ取ると同時に、自分とは異なる分析家の主体性を感じ取る能力を獲得することである。」(Gabbard (2003), Rethinking therapeutic action, p825. ということです。要するに心の動かし方を両者の間で実践するという所があります。