DID裁判の新しい動き
では最近のDIDの扱いに新たな傾向が見られるのか?この章でも何度も取り上げている上原論文はその点をまとめてくれている。それによれば三つの裁判が新しい傾向を示す。それらを以下にまとめよう。
①
名古屋高裁金沢支部判定(平成28年3月10日)は強制わいせつに関してDIDの副人格によるものと認めて被告に完全責任能力を認めたものの、原判決を破棄して執行猶予付きとした。
②
東京高裁(平成30年2月27日)は窃盗に関してDIDの副人格によるものとしたうえで、被告に心神耗弱を認め、再度の執行猶予(保護観察付)を与えた。
③
大阪高裁判決(平成31年3月27日)覚せい剤取り締まり法違反に関してDIDの副人格の犯行と認めたうえで、被告人を心神耗弱とし、再度の執行猶予(保護観察付)を与えた。