解離性障害を障害とみなさないこともまた差別となりかねない?
ここまでで私は解離性障害を病気とみなすことに伴う差別性について論じてきた。ただしここでもう一つ付け加えなくてはならない視点がある。それは病気とみなさないことも差別となりかねないという点である。
考えてもみよう。ヒステリーは長い間「僭称」であった。ヒステリーがどの様に扱われていたかを、Freud
自身の言葉を引用して示そう。
この病気の正当な評価とよりよい理解は、シャルコーと、彼によって激励された去るペトリエール学派の研究によってはじめて始まった。この時代までヒステリーは医学のベート・ノワール(嫌われ者)であった。昔は焼き殺され、また追放された哀れなヒステリー患者は、最近の啓もうされた時代には、嘲笑の的になった。この様な患者の状態は、臨床観察に値しないものと判断されたし、仮病や誇張とみられている。しかしヒステリーはこの場の最も厳密な意味で神経症の一つである。