2022年3月13日日曜日

嗜癖における like と want (2)

 この論文で次に書いてあることはことごとく私が知らない、しかもとても重要な問題である。
  気持ちいい!(liking)をつかさどるのはいくつかの小さなホットスポットだという(”Hedonic hotspots”).それは解剖学的には小さく、神経科学的には限定され、容易に障害される。だから「欲しい wanting 」に比べれば、強烈な「気持ちよさliking」は比較的少なく、人生で何度も起きないのだという(Berridge & Robinson, 2016, p.4)。例えば側坐核の中でこのホットスポットは10%しか過ぎないという。そのほか前頭前野の辺縁系、島皮質、そして皮質下の構造にも散在するという。そしてこれらの分野をオピオイドや内因性カンナビノイドで刺激するとその喜びが増すが、ドーパミンによる刺激ではその様な反応は起きないという。そして一番注目すべきは腹側淡蒼球 ventral pallidum にあるホットスポットで、それは皮質下前脳皮質の底の部分にあり、そこをちょっと損傷しただけで正常な快が失われ、むしろ嫌悪すべき刺激になるというのだ。

ここでちょっとウィキチェック。

腹側淡蒼球 (ventral pallidum, VP) は、上述の淡蒼球の腹側に位置し、無名質 (substantia innominata) の一部を成す。 腹側線条体、すなわち側坐核と嗅結節からの入力を受けるが、それらはほとんどがGABA作動性の抑制性入力である。

  さてここまでの発見は、著者たちの動因感作理論incentive-sensitization theory の半分までの到達を可能にしたという。