2022年2月14日月曜日

オンライン治療におけるテレプレゼンスに関する質問に答える

Q1 プレセンズ(その場での気配、存在感)とテレプレゼンス(オンラインでの気配、存在感)について。対面でのセッションとズームを用いた場合で、気配の違いがあります。それらは互いに補うような関係なのでしょうか?両方のやり方の治療的な「行き来」は可能でしょうか?

A1 私は基本的にプレゼンス(つまり実際に会っている時の気配、存在感)とテレプレセンスとは別物であり、別々の種類の体験であるという考え方を取っています。あるいは別々の(治療)構造を提供しているともいえるでしょうか。各人が両方の「プレゼンス」について、やりやすい部分、やりにくい部分を持っているのでしょう。それは例えば対面法とカウチを用いたセッションに似ています。こちらもそれぞれが別々の体験を生むでしょう。その際に「カウチで足りなかった分、対面でやりましょう」とか「対面で出来なかった分を補充するためにカウチを使いましょう」と考えて両者の間を「行き来」するでしょうか?それはあって構わないし、それなりに有益だと思います(実際に私は自分の分析家との間でそのような経験も持ちました)があまり聞きませんね。それらは恐らくは別々の体験として自分の中に蓄積されるのではないでしょうか?もう一つ先生のご質問から浮かんだことは、実際に会ってカウチを用いるセッションでも、ヒアアンドナウを無きものにしてしまおうという私たち分析家の傾向はとても強いという事です。私自身にもそれを強く感じます。逆にオンライン上でもヒアアンドナウを心がけることで、それをかなりの程度まで高めることが出来るのではないでしょうか? これは自戒の念を込めてのお答えです。 

Q2 オンラインセラピーを導入することは構造の揺らぎをもたらすわけですが、それは治療にとって一つの好機ととらえるべきでしょうか?

A2 私の本の一文を引用していただきありがとうございます。まさにそうですね。オンラインへの移行という問題を超えて、新型コロナの影響を被った治療関係がどの様にそれに耐え、乗り切るかを一緒に考えるという点はまさに柔構造的なスタンスであり、そこに大きな治療的な意味があると考えます。