2022年2月15日火曜日

引き続き 他者性の問題 17

 さて次の絵に出てくるのは、このSの隣に赤い破線の〇で示したPPという場所が成立した様子を描いている。


このPPという頭文字の意味するところはまだ明らかにしないでおこう。これがSの部分の横に出現しているのがわかるだろう。そしてそれは運動野や感覚野に勝手に信号を送っている。それが赤い線によってあらわされている。すると何が起きるかと言えば、運動野の特定のネットワークを妨害し、それにより手足が動かなくなったり、意図せずに勝手に動いたりする。あるいは皮膚からの感覚入力に変化が起こり、それが麻痺したり異常な感覚を起こしたりするであろう。問題はSすなわち主体は自分の体で何が起きたかを知らないという事である。PPは主体にとって他者的な存在であり、それが何を意図しているかはわからない。だから体験としては「勝手に手が動いた」「急に唇の感覚がなくなった」となるのである。この感覚は、例えば「無意識に手が動いた」という体験との差異が微妙であると言わなくてはならない。これとPPの影響による体験は時には同等であり、時には異なる。というのも私たちが「無意識的に~した」と感じる時に、どこかで自らのかすかな意図に気が付いていたりするからである。そもそも「無意識的」には記述的、力動的、という異なる用い方があるとされる。記述的、というのはそれをやっている瞬間は意識をしていなかったという事である。例えば私たちは歩いている時いちいち「ハイ、次は右足を前に出して」などと意識しているわけではない。でも足が勝手に動いた、とは思わないわけである。ところがPPによって妨害電波を流された運動野や知覚野により生じる運動野近くの異常はSにとっては完全に異物と感じられるのである。