2021年12月17日金曜日

偽りの記憶の問題 9

 96ページあたりに出てくる「連想活性化 associative activation」の記述も大切だろう。要するに記憶は、ある事柄からの連想という形で活性化されていくという事だ。この事柄のつなぎ目をノード(結び目)と呼ぶが、似た意味を持つノードの間には、強い結びつきがある。私がパリという言葉を思い出すと、30歳の頃から留学した一年間の出来事がザザーッと流れてくる。そのうちの一つ、例えばパリにいた5月のヨーロッパ旅行のノードについて思い出すと、そこからザザー。パリの時には思い出すこともなかった、ミュンヘンの街角の喫茶店で食べた、クリームてんこ盛りのケーキのことまで思い出すのだ。そして97ページ目に重要なことが書いてある。連想活性化については、符号化encoding と想起recollection の二つの時点で過誤記憶を生むという。前者は要するに覚え込むという事、後者は思い出す、という事だ。この本にはいい例が載っていないので、私が作ってみると、「ある日焼けをしたいかつい肉体労働者が工事現場でミスをした部下を怒鳴りつけた」という話を覚えてもらって、後に想起をしてもらう。その際その肉体労働者はひげを生やしていたかに、イエスと答えた人が多数いたとしよう。ところが実はその肉体労働者は若い女性だったこともありうる。しかしその符号化の時点で、被検者はそのいかつい肉体労働者が男性であるという思い込みと共にそれを覚え込んでしまう可能性がある。(あまりいい例ではないか?)しかし私が言いたいのは「過誤記憶」はこの連想活性化という強力な心の働きのマイナス面でもあるという。

このあと98ページあたりに出てくるエングラムたちのパーティのシーンが秀逸である。要するにエングラムはパーティに出席して次々と新しい友達を作ろうとする人の様だという。「人間と同様、記憶の断片は新しい結びつきを作ろうと、他の記憶の断片を積極的に探す」

そしてその新しい結びつきこそ、創造的、芸術的な事であり、新しい思考を生み出し、複雑な問題を解決することが出来るという。しかしそれは過誤記憶の原因ともなるのだ。でもこれは夢を見ている間も盛んに起きているのではないであろうか?