2021年12月16日木曜日

偽りの記憶の問題 8

 引き続きショウの本を読み進める。

P84あたりに、例の再固定化の話に関連する話題が出てくる。ラットにある音を聞かせたのちに電気ショックを与える。その際に扁桃体にアニソマイシン(タンパク質合成阻害薬)を与えるとその条件反射が形成されない。ところがその薬物を用いることなく、通常の条件反射が出来たラットに例の音を再び利かせ、その時にアニソマイシンを扁桃体に与えるとその記憶が消去される。つまり思い出すという事は、その記憶が一時的に不安定になるという例の話だ。しかし以前に書いた喜田先生たちの研究との違いは、恐怖記憶を310分の間思い出させることで消去に向かわせる、というのではなく、そこにアニソマイシンという薬物を用いているという違いがある。

91ページあたりの記載が興味深い。海馬に場所細胞という細胞がある。ある特定の場所に来ると興奮する細胞だ。例えばネズミが檻の右端に来ると興奮する細胞が海馬にあり、「今右端にいるよ」と教えてくれる。その場所細胞に刺した針から電気が拾えることになるから、そこの興奮が分かる。これによりネズミは今自分がどこにいるかを知る。さて次にネズミに夢を見させ、たまたまその細胞が興奮した時に、(つまり檻の右端にくる夢を見ている、という事だろうか)快感中枢に刺した電極を刺激し、心地よさを体験する。その様な処理をされたネズミは、起きた後に、その檻の右端に行くと気持ちよくなるので、いつもそこに行くという事になる。この実験では、夢を見ているネズミの場所細胞が興奮した時に不快な電気刺激を与えると、今度はその場所に近づかなくなってしまうというわけだ。

これらの記載の中で私がいつも理解しては忘れてしまうオプトジェネシスの説明が書いてあったので、そのうち復習してみよう。