2021年12月28日火曜日

偽りの記憶の問題 20

 ショウの本を読んでいるうちに、p.225 でミラーとブッシュマンの研究に突き当たった。要するにあることを意識しているとは、それに関連した神経ネットワークに参加するニューロンが同期化しているという話だ。以下の論文はネットで手に入るのだ!

Miller ,EK & Buschman, TJ(2013Brain rhythms for cognition and consciousness. Neuroscience and the Human Person; New Perspectives on Human Activities.121.

この論文を読んでいる余裕はないが、結局ワーキングメモリーとはこういう事か、という事を考える上での参考になる。でたらめな7桁の番号、例えば 34290765 を一分間保持しよう。これは貴方が常に復唱し続けることで一分間持ちこたえるような代物である。電話番号をメモ帳に書き留めてダイアルしているようなものだ。(メモ帳、とかダイアル、とかもそのうち死語になるだろう。)これは無理やりいくつかの数字を同期化させることで維持する労力なのだ。同期化とは、自然に起きない場合にはそれこそ意識のワークスペース全体を使わなくてはならないことだ。もしこの 34290765 が 034290765 が貴方の電話番号なら、一分間何もせずともこの数列を同期化させることが出来る。ところがそもそも同期化したことがないニューロンを同期化させ続けるのが短期記憶というものなのだ。それをしている時、意識は他のことが出来ないほどに忙殺される。
 ショウの本はさらに、人間の意識がどうしてマルチタスクが出来ないかについても説明している。それをするには一つのニューロンがいくつもの波長のリズムを送り出さなくてはならないが、それが出来ないというわけだ。そしてこのことが、心がマルチタスクでありかつシングルタスクでもあるという矛盾を説明する。シングルタスクというのは、いちどに34290765一つしか復唱できないという事だ。マルチタスクとは他の脳の部分が勝手に無意識的に同期して鳴っているという事を意味する。例えば🍎を思い浮かべると、その味、色合いなどはそれぞれ対応する神経ネットワークが同期化して鳴っている状態であろう。ただそれが無意識的なのだ。しかし人格がいくつも存在するとは、一つの神経細胞が何種類もの同期を持つ能力を意味しないだろうか?