p.138には面白いことが書いてある。2011年、アメリカ小児科学会は、2歳以下の子供には画面を全く見せるべきではないと明言しているという。この画面にはタブレットもテレビも含まれる。実際言葉の力も画面を見る時間が長いほど遅れが目立つという驚きの研究もあるそうだ。このことはミラーニューロンのことを考えれば納得がいく。ミラーニューロンでは例えば母親が発した言葉と自分のおうむ返しをした言葉の微妙な差異をキャッチして修正する出だろう。あるいはニューラルネットワーク的に言えば、ディープラーニングは相互のやり取りを通してしか学習していけない。一方向性では意味がないのである。
次のテーマは睡眠と記憶との関連である。これも大きなテーマだ。
まず定説となっているのが「アクティブシステム固定説active system consolidation
theory」これは徐波睡眠中に、記憶が強化されるというものだ。これは必要なシナプスの結びつきを強め、余分なものをなくすという意味では、刈り込みpruning なのだという。そしてそこで重要な役割を持つのがグルタミン酸であるという。これはカルシウムの入流を導き、細胞を活性化する。これが睡眠中に起きるが、あまりカルシウムが入りすぎると例のアポトーシスを起こす。ところが睡眠を十分にとることで、この過剰なグルタミン酸の生産が抑えられるという。ン? 睡眠によりグルタミン酸が放出されるが、十分睡眠をとることでグルタミンの過剰な放出が抑えられる? 睡眠とグルタミン酸の関係も微妙なようである。
その後ショウはこれまでさまざまな形で論じられることの多かった「睡眠学習」について、その存在を示すような実験結果は何も得られていないという。睡眠中に流しっぱなしにすると語学が学習できる、などの触れ込みの教材などを耳にしたことがあるが、結局それらは科学的な根拠がないという事になる。