2021年12月19日日曜日

偽りの記憶の問題 11

  昨日の続きだ。こんな実験があるという。ある架空の事故について説明し、それが広くテレビニュースやネットで流されていると伝え、その映像を見たことがあるかと尋ねる。するとHSAM29%、非HSAM20%が実際にそれをテレビで見たことがある、という過誤記憶を報告している。これは人がいかにうそを信じやすいか、という話ではなく、記憶の生成そのものがそのような過誤記憶を生み出す性質を持つからであり、HSAMの人々はその力が強いために過誤記憶もより多く生み出すということだ。
 この記憶のメカニズムについては、コリンズとロフタスによる「活性化拡散モデルspreading activation model」というのがあるという。要するにある単語や概念が四方八方に連なっていて、そのうちの一つが興奮すると周囲にその影響がいきわたり、周囲を活性化させるというモデルである。ショウの本に出てくる挿絵をここに示す。

 

要するにHSAMの人たちはこの蜘蛛の巣状の結び目が極めて太いということであろう。

次に本書はサバンについても触れているが、これはHSAMとかなり違う。というか逆の性質を有する。HSAMの人々は個人的な記憶が異常に優れているが、事実や情報などは普通である。ところがサバンは個人的な記憶ではなく、事実と情報に限られる。うーん、確かに逆だ。こうして二つの超人的な記憶のパターンが紹介されたが、がっかりすることに、結局は彼らの異常なほどの記憶力の秘密は解き明かされていないということだ。
 この章では興味深い記載を見つけた。PTSDについてである。この病気ではいわば忘れられないトラウマ記憶にさいなまれるわけであるが、それ以外にも記憶の問題がみられるという。PTSDの患者さんと一般人に記憶力テストを行うが、その際一連の単語を見せた後、それを覚えておくか忘れるかを指示される。すると、患者さんの方が記憶できた単語数が少ないという。ところが興味深いことに忘れるように言われた単語は逆に余計覚えているという所見も明らかになったという。つまりPTSDでは「忘れる」能力が低下しているということなのだ。