2021年11月17日水曜日

解離における他者性 47

ここまで述べたDCの二つの特徴を示す。

    ひとつのDCの特徴は、私たちの意識活動はDCに属する多くの神経細胞が相互に高速の再入、つまり行ったり来たりの情報の交換を行っているということである。

    もう一つの特徴は、そこにおける意識活動は比較的広範囲の神経細胞を動員するということである。逆に私たちがある行動に慣れ、あまり考えずに行える行動はあまり多くの神経細胞を動員せずに済むということだ。ある例として、テトリス(まさか若い人でこれを知らない人はいないだろう。私たちの若い頃はこれが立派な電子ゲームだったのだ)を被検者にしてもらう。最初はみなこれをやりなれていない場合は意識野はフル回転をしてそのタスクをこなす。しかしスコアは上がらない。ところが何週間かの練習を積んだ被験者の脳の活動やエネルギーはごくごく少数の活動とともに驚くべき高いスコアをはじき出す。後者の場合被検者は「鼻歌交じりに」夕ご飯のおかずのメニューをぼんやり考えながらテトリスに興じることになる。

離断症候群の教えてくれること

両方向性の情報の交流がいかに意識の成立に意味を持っているかについて雄弁に語っている離断症候群について説明したい。脳は右脳、左脳に分かれているのはご存じであろうが、それらの間の橋渡しをしているのがいわゆる脳梁という部分で、ここは二つの脳の間を約二億本と言われるケーブル、すなわち神経線維が橋渡しをしているのである。そしてそれにより私たちは右の心と左の心という二つの心を持っているという自覚がない。