2021年11月18日木曜日

解離における他者性 48

 ここら辺からEdelman, Tononi の「A Universe of Consciousness 意識の宇宙」を拾い読みして、知識を増やしておく。

DCとの関連で、Edelman らは、第一次意識 primary consciousnessと高次意識を higher-order consciousness を区別する。前者は非常にプリミティブな、いわば動物レベルの意識だ。それに比べて後者は過去や未来をイメージでき、象徴や言葉を用いることが出来る。そしてここでも登場するのがまたもやリエントリーの問題である。そしてここがややこしいところなのだが、第一次意識は、脳の前部で価値に基づく記憶value-based memory を扱い、後方の脳で知覚的なカテゴリー分けを行う部分が発達した時に成立するという。それにより昔のことを現在において再現することが出来るようになる。そしてここで大切なのは、それが行動を生み出すことを目的としているという事である。

ここで記憶についての解説が示される。記憶とは決して表象的 representational ではない、と言う。つまり何かの印や記号のようなものではなく、あくまでも神経細胞の興奮のパターンである。(そのような考え方を総称して「TNGS neuronal group selection、神経グループ選択」と呼ぶらしい。)そしてそれが特別選択され成立するために必要なのが力価  value という概念だ。つまり力価が高いものが選択されて残り、低いものは消えていくというわけか。私の考えではこれはどうも快、不快の問題とも結びつくようだが。要するに快、不快の力価が高いと、それを求めるために、あるいは回避するために深く脳に刻まれるというわけである。

TNGSの最大の特徴は再入、リエントリーであるという事がまた強調される。 これにより脳は上位のコントロールセンターを必要としなくなる。リンゴ、という上位の概念がどこかに存在するわけではない。しかしリンゴを見ると、リンゴの色、形、味覚などを支配する脳のあらゆる部位が同時に発火する。これはいわゆる「biding problem 結びつけ問題」を解決するともいう。この結びつけ問題は、脳科学における未解決の問題という事になっている。