2021年11月15日月曜日

解離における他者性 45

 ダイナミックコアとは何か?

 彼らのいうDCは具体的には視床と大脳皮質の間の極めて高速の情報の行き来が生じている神経ネットワークである。彼らはこの情報の双方向性の行き来という点を重要視し、それが意識が成立する上での決め手であると考えている。

彼らは大脳皮質とそこからの情報をまとめる視床、そしてさらには大脳辺縁系を結ぶ緊密な神経ネットワークが考えられるとして、それをDCと呼ぶ。その詳しい解説は省くが(というより私にそれをまとめる力がない)そこで重視されるのがリエントリー reentry 再入という現象である。つまり情報は一方から来るだけではなく、情報を受けた側が情報もとに情報をフィードバックするという事である。ネットワークはこの両方向性を有することで初めて情報の中に統合性が起きるという事である。

例えばサルを用いた動物実験で、赤い十字のマークを選ぶとジュースがもらえるという仕組みを作る。そして赤い十字を緑の十字や赤い丸などと混ぜたいくつかの絵を見せる。そうやって赤い十字を同定させるのだ。するとそれを学習したサルは、脳の大脳皮質の赤に反応する部分と十字に反応する部分からの脳波が同期する。赤の十字を見つけて「これだ」という体験は要するにそれのいくつかの特徴に反応する部分が同期化することで同定が行われるのだが、これはそれらの部分から視床に向かう信号とは別に、視床からのリエントリーにより同期化されるというわけだ。別の言い方をしようか。ある物事に関連した様々な要素が同時に(同期して)発火するとき、その物事を同定した、あるいは分かったと感じるわけだが、そこには必ず上位から下位へのリエントリーがなくてはならない。それにより脳の全体が共鳴する必要があるのだ。逆に言えばある特定の刺激に対して脳の全体が共鳴するようなニューラルネットワークは、心を持っているということになる。ダイナミックコアとはそのようなネットワークのことなのだ。