2021年10月31日日曜日

解離における他者性 30

 英国学派における解離

 スプリッティングというのは、現代の精神分析において、日常語になりつつある。それは主として M. Klein の提唱した概念が流布しているということが出来る (Klein, 1921,1923)。いわゆるスプリッティングとして私たちが頭に思い浮かべるのは、境界パーソナリティ障害などで言われるスプリッティングの機制である。フロイト自身はスプリティングを3つに使い分けた(Brook,1992)。それは①意識のスプㇼッティング、②自己表象、他者表象、情動の良い、悪いへのスプリッティング、そして③態度のスプリッティングであったという。そしてKlein や英国対象関係論ではこのうち②の意味に限定されているというのだ。そうか、これは Klein の専売特許ではないという主張という事になるが、ともかくもこの意味でのスプリッティングでは①の意味での、すなわち意識のスプリッティングを表現してはいないことになる。しかしここで興味深いのは、Klein の内的対象の概念は、「自我や他の対象に向けての独自の意図や動因を有している」(Hinshellwood, 1991)と理解されているという事だ。ただいずれにせよ彼女の概念はvan der Hart のタイプ1に属すると考えていい。
  さて Klein が大きな影響を及ぼした Fairbairn についても言及しておかなくてはならない。二重、三重人格に関しては、そのスキゾイド的な性質については Janet ,William James, Morton Prince などにより記述されている。Fairbairn の引用となる。

「ヒステリーのパーソナリティは例外なくスキゾイドの要因を、それがどれだけ深く埋もれているとしても、多かれ少なかれ有している。」

この様にフェアバーンの解離の概念はあまり特異的とは言えず、それは「スキゾイド」や「スプリッティング」と交換可能な形で用いられている (van der Hart, et al. 2009)。それは心的な組織の分裂が有する特異な性質への焦点づけが不足しているのだ。英国の対象関係論においてはスキゾイド問題は主たるテーマであるが、それは元の Breuer の「類催眠」現象や二重意識というテーマからは大きく離れていったと言える。