解離性健忘の治療
便宜的に初期、中期、後期の三段階に分けて論じたい。第一期は安全や安定の確立,第二期は記憶の再構成、第三期 リハビリテーションや社会復帰、である。
第一期 安全や安定の確立
第一期では安全や安定の確立を目指す。可能な限り責任ある仕事や役割を離れ、ストレスのない完全な環境で過ごすことを心がける。その際に当人や家族に対する情報提供や心理教育、今後の治療方針についても伝える必要がある。それは解離性健忘の特徴、すなわちトラウマや大きなストレスを体験した時に、心がそれを処理しきれない時に起きる防衛本能として健忘が生じるという説明をする。ただし時にはそのような明らかなトラウマの体験が思い当たらない場合もあるので、原因を必要以上に追究する必要はないことを伝える。そして解離性健忘は、基本的には社会復帰を目指すことが可能な、予後が比較的よく、繰り返されることも少ない病気であることを説明する。また記憶は何年かたって突然戻ることもあるが、それを期待したり記憶を甦らせようと本人や周囲が躍起になることは当人のストレスを増すことになる可能性を伝える。当人には記憶の欠損以外に精神科的な症状は見られない場合が多いが、復職や社会復帰は急がずに、当人が好きだったり興味を持てる趣味その他の活動をしつつ平穏な毎日を送ることを心がける。
この時期には家族も当人への対応に戸惑い、疑問に持つこともあるために、家族へのサポートも重要である。当人が忘れたふりをして家族への責任を回避しているのではないかと考える家族には、解離性健忘という疾患についての理解を促し、演技ではないことを伝える必要も生じてくるであろう。
<個人年表づくり>
当人の社会復帰に応じて、当人の過去の生活歴の中で知っておいたほうが適応上好ましい出来事は、知識として獲得したほうがいい場合がある。本人の通った学校やそこでできた友達、当時はやっていた事柄、社会状況などについては、当人が抵抗を示さない限りにおいてはリストアップし、年表を作ることも助けとなる。ただしそれが当人のストレスにならない限りにおいてである。またその過程で自然と想起される事柄もあるであろう。またその際に不可抗力的に過去のトラウマ的な出来事が想起された際はそれに応じた治療的な介入も必要となろう。
なおその際解離性健忘が生じた時の生活や仕事の環境の中でストレスになった可能性のあるものは今後は回避すべきであろうとの洞察が得られることもある。例えば技術職として適応していた人が昇進して管理職を任されたことでストレスが高じて解離性健忘を引き起こした可能性のある場合は、それを考慮した症例の職業選択も必要になる。なお解離性健忘が何らかのトラウマ的な出来事に引き続いて起きたことが明らかな場合は、自らのトラウマ記憶に向き合い,それにまつわる不安や恐怖を和らげ,それを克服するこが中心となる段階でもある。これらの活動をしつつ、徐々に健忘以前の生活スタイルに復帰することを促す。病前に興味のあったこと、新たに関心を見出したことについては残存しているスキルを再び用いることが出来るという意味では有効であろう。しかしそれがトラウマと結びついている場合は当然ながらその限りではない。
第3段階:再結合とリハビリテーション 日常生活における不安や恐怖を克服し,日常生活に積極的に関与する段階.この段階はこれまで不安や恐怖によって避けていた日常生活の範囲を次第に広げ,様々なストレスに対して うまく対処することができるようになる.全生活史健忘の場合、当人の社会的な能力は保たれていることが多く、特に過去に獲得して失われていないスキルや能力を活用して社会復帰につなげる努力はむしろ重要であろう。
最後の方はかなり流して適当に終わらせているところがある。