例えば幼少時に繰り返し虐待を受けたケースを考える。そしてそのトラウマのフラッシュバックが生じるとともに、解離状態になり、普段と異なる言動を示すようになるとしよう。そしてその人がやがて成長し、多彩な解離症状を示すとした場合、それはPTSDという形を取るだろうか。おそらくDIDの人がどの程度PTSDとしての併存症を有するかを調べてみるといい。
という論文には、DIDの人が障害のうちでPTSDの診断を有するのは46.7% ~ 79.2%であると記している。まあ6,7割としよう。すると3,4割のDIDの患者さんにはCPTSDはつかないということになる。しかしDIDの殆どの方は「私の考える」CPTSDの基準を満たしているのである。では私が考えるCPTSDとは何か。それは繰り返しトラウマを体験したという経歴とDSOである。そこに解離症状を含めないとすれば、繰り返されるトラウマの結果が解離症状とは言えないからだ。
もう少し自由連想を語るならば、CPTSDの概念が掲載されたのはいいが、その内容がPTSDに引っ張られすぎではないかと思うのだ。PTSDの複雑型、ということでPTSDの診断基準にプラスアルファしたものをその診断基準にしたというわけだが、それはPTSDの持つ解離にあえて触れないという特徴を踏襲してしまうことになる。せっかくいい概念なのに解離について触れないことがむしろ不自然で、それならDSM-5の「PTSDの解離タイプ」のほうがわかりやすいのではないかとも思ってしまう。ただしこちらのほうもPTSDの基準を満たすことが前提となる。やはり「PTSD派」寄りの概念ということか。
明日は治療論について一言。