そこで精神分析の文献で解離について扱っているものを探すと、これが結構あるのだ。Psychoanalytic Perspective という専門誌は、2015年に専門家のラウンドテーブルを企画している。そこに参加しているのはSheldon Itzkowitz, Richard Chefetz, Margaret Hainer, Karen Hopenwasser, and Elizabeth Howell というこの世界では錚々たる面々である。どうやら関係精神分析では、おなじみのD.Stern, P.Bromberg の次の世代に属するこれらの人々がいるらしい。40ページほどあるが内容はあまり分析的とは言えない。というか精神分析の資格を持っている人たちが、解離の治療をしています、という報告で、精神分析の理論をどのように解離に応用するか、などのムズカシイ議論はしていない。解離は全然別の話ですよ、でもフロイトが否定したフェレンチがこれだけ先駆的な仕事をしていますよ、というメッセージしか伝わってこない。その中でイスコヴィッツ先生が、トラウマや解離について大文字のトラウマTrauma 小文字のトラウマtrauma そして大文字の解離Dissociation と小文字の解離dissociation を言い出しているのが面白い。彼は理論にこだわるようだ。ただし男性は彼とシェフェッツ先生で、残りの専門家はお姉さま方で、彼の少し硬い話はあまり入って行かないようだ。ただ彼らの議論の中でホーペンバッサーさんが「私は『断片化』なんて言葉は使わないわよ」と言っているのがとても心強く思った。