2020年9月7日月曜日

論文作成 ブレインストーミング 3

 そこで精神分析の文献で解離について扱っているものを探すと、これが結構あるのだ。Psychoanalytic Perspective という専門誌は、2015年に専門家のラウンドテーブルを企画している。そこに参加しているのはSheldon Itzkowitz, Richard Chefetz, Margaret Hainer, Karen Hopenwasser, and Elizabeth Howell というこの世界では錚々たる面々である。どうやら関係精神分析では、おなじみのD.Stern, P.Bromberg の次の世代に属するこれらの人々がいるらしい。40ページほどあるが内容はあまり分析的とは言えない。というか精神分析の資格を持っている人たちが、解離の治療をしています、という報告で、精神分析の理論をどのように解離に応用するか、などのムズカシイ議論はしていない。解離は全然別の話ですよ、でもフロイトが否定したフェレンチがこれだけ先駆的な仕事をしていますよ、というメッセージしか伝わってこない。その中でイスコヴィッツ先生が、トラウマや解離について大文字のトラウマTrauma 小文字のトラウマtrauma そして大文字の解離Dissociation と小文字の解離dissociation を言い出しているのが面白い。彼は理論にこだわるようだ。ただし男性は彼とシェフェッツ先生で、残りの専門家はお姉さま方で、彼の少し硬い話はあまり入って行かないようだ。ただ彼らの議論の中でホーペンバッサーさんが「私は『断片化』なんて言葉は使わないわよ」と言っているのがとても心強く思った。

 Itzkowitz, S., Chefetz, R., Hainer, M., Hopenwasser, K. and Howell, E. (2015)  Exploring Dissociation and Dissociative Identity Disorder: a Roundtable Discussion Psychoanalytic Perspectives, 12: 39–79

 40ページのラウンドテーブルの記録をざっと読んだが、やはり本質論は出てこず、トラウマの話である。そして分析関係の人はどこが分析なの、となるだろう。でも恐らくそのようなことをあまり気にしなくてもいいという事らしい。問題は精神分析の専門誌で、いかに精神分析的な解離理論を書くか、という事ではない。いかにその専門誌で過去に書いていた著者の肩に乗るか、という事だ。つまりはいかにそこの文化に入っていくかの方がよほど重要らしい。そこでまた出てくる例のテーマがある。論文を書くときは、どの専門紙に投稿するかをまず決めよ。