2020年9月18日金曜日

解離における他者性とは何か? 4

 分析的な心の理解について

ここで精神分析的な心の理解の基本について一言申し上げたいと思う。それはあまりに常識的で、改めて申し上げるまでもないことだが、それは心が一つであるという事である。もちろん心はいくつかの部分に分かれている。それをフロイトは意識、前意識、無意識と呼んだり(局所論モデル)、超自我、自我、エスと呼んだり(構造論モデル)した。しかしそれらは全体として一つなのであり、それらは力動的な連続体として捉えられるのである。そしてその意味では、意識と無意識はつながっているのだ。そしてこれがフロイトが発見したと考えた心の秘密の最大のものなのである。なぜならこれまでは十分に説明がつかなかった人の行動や症状を説明する手段が得られることとなったからである。

例えば地球を考えてみる。地球は一つであり、内部のマントルその他を通して繋がっていると私たちは理解している。すると地球の遠く、例えば裏側で起きた何かが、内部のマントルの動きか何かを介して、表側に何らかの影響を与えるかもしれないではないか。たとえば太平洋岸で地震もないのに大きな津波が押し寄せた。実はチリで大地震が起き、そこで起きた津波が太平洋を渡って太平洋岸に及んだ、という事が分かった。1960年のチリ地震で実際に起きたことである。こうなると地球の全体がつながっているという事が分かる。太古の時代には日本の津波とチリの地震が関係していたことなど知る由もないだろう。でも地球に関する情報が行きかう現代ではその様な動きはすぐにわかる。私たちは「そうか、地球は繋がっているんだ!地球上の各地で起きることはすべて説明がつくんだ」と思うかもしれないが、それにより説明がつくのは地球上の出来事のほんの一部でしかない。

しかし心を一つの全体としてとらえる見方を提唱したフロイトにとっては心がそうでない場合には都合が悪くなってしまうという事だろう。ともかくも解離性障害を受け入れないフロイトにはそのような事情があったものと考えられる。