2020年5月28日木曜日

ICD-11における解離性障害の分類 2


ICD-11における解離性障害の特徴をうまくまとめている文章を見つけた。こういう論文がopen access で本当に助かる。
Innovations and changes in the ICD-11 classification of mental, behavioural and neuro-developmental disordersWorld Psychiatry 18:1 - February 2019)ちょっと億劫だが日本語にしよう。
ICD-11の解離性障害の分類は大きな改変がみられ、またかなり単純化されているが、それは最近の研究の成果を反映している。まず転換conversion という用語はなくなった。そのかわり解離性神経症状症dissociative neurological symptom disorderという障害名に統一されたが、これは ICD-10の運動と感覚の解離性障害 dissociative disorders of movement and sensation を継承していることになる。そしてそれは12のサブタイプからなる。それらは神経症状のうち何が主たるかにより分かれているが、それがかなり網羅的である。それらは発作またはけいれん、脱力または麻痺、感覚変容、歩行症状、他の運動症状、認知症状、意識変容、視覚症状、嚥下症状、聴覚症状、めまい、発話症状、である。また解離性遁走が解離性健忘のもとに分類されたのは、DSM-5と同じだ。
さらにICDでは憑依・トランス障害であったものを憑依・トランス障害とトランス障害に分けている。これは前者では外的な憑依的なアイデンティティ(霊魂spirit、威力power、神のような存在deity、そのほか)が支配するという点が特徴的だからであり、また後者は反復的で単純な動きしか見せないのに対して、前者はより複雑な動きを示すからであるという。
ICD-10の多重人格障害は解離性同一性障害というより現代的な呼び名に代わっている。また部分的解離性同一性障害も導入されたが、これはICD-10における不特定の解離性障害にこれが含まれていたからである。後者においては、主流でないパーソナリティが個人の意識や機能をコントロールすることがより少ないとする。また以前は別のところに分類されていた離人性障害、非現実障害もこちらに含まれることとなった。