Howellさんの本のこの章の中で、各人格に固有のネットワークを示唆している部分は決して多くないが、次の二本の論文を紹介している。
Reinders, AA.T.S., Nijenhuis, E.R.S., Paans, A.M.J., Korf, J., Willemsen, A.T.M.,& den Boer, J.A. (2003). One brain. two selves. Neurolmage. 20, 21 19-2125.
Reinders, A.A.T.S., Nijenhuis, E.R.S., Quak,J., Korf,J.,Paans, A.M.J., Haaksma,J., Willemsen, A.T.M., & den Boer, J.A. (2006). Psychobiological chBiolog1cal Psychiatry, 60,730-740.
彼らは11人のDIDの患者さんに協力してもらった。彼らは普通のパーソナリティ状態(NPS)とトラウマを受けたパーソナリティ状態(TPS)になることが出来た。彼らにはトラウマを思い起こさせるような文章(トラウマスクリプト)と情緒的にニュートラルな文章(ニュートラススプリプト)を読んでもらい、反応を見た。
まずTPSの状態では全体として、mPFC(内側前頭前野、体験の意識的な処理をつかさどる部分)の血流量が低下した。
NPSの時は頭頂後頭葉(視覚的情報と体性感覚的な情報の統合をつかさどる)の血流量が低下していた。つまり情動的な記憶を防衛としてブロックしているということである。
そしてNPSの時にはトラウマスクリプトを読んだ場合とノーマルスクリプトを読んだ時とで、脳の活動には違いがなかった。
そしてNPSの時にはトラウマスクリプトを読んだ場合とノーマルスクリプトを読んだ時とで、脳の活動には違いがなかった。
これは二つの人格状態は別々の脳のネットワークを持っていますよ、という様な大胆なモデルを示唆してはいない。異なる人格の状態では、一つの脳が異なる切り盛りの仕方をしていますよ、ということだ。しかし私はこの点を強調しておきたい。
NPSの時は両方のスクリプトで差がなかった。つまりトラウマスクリプトの時に前頭葉の活動でストップをかけていた、というわけではない。(これはトラウマ記憶が処理されている時にはよく出てくるパターンである。)ということはNPSは無理をせずにトラウマ記憶をサラッと読んでいた。ということはこれはDIDとして独自のネットワークを使っているということの証左にならないだろうか。