2020年2月29日土曜日

揺らぎ 推敲 3


人の心が関与した揺らぎ ― 株価 

私が今から20年ほど前に、最初に揺らぎの不思議さや面白さを感じたのは、株価の変化についての興味であった。これまで私が述べてきたのは、自然界の揺らぎである。風の動きも、地面の動きも、地球の動きも宇宙の動きもすべてそうだった。しかし人の心の関与した物事が揺らぐ、となると全く別の事柄のような気がするだろう。人の心は私たちがコントロールしているはずだ。それが意思の力というわけである。揺らぎがもし生じるとしても、人の心がそれをコントロールすることが出来るはずだ。ということは自然界と違って、人の心の関与したものはそう簡単には揺らがないはずだと思ってもおかしくない。確かにそうかもしれない。
例えば一日は24時間だというのは人が決めたことだ。それが例えば今週は25時間、来週は23時間、中東のドバイでは一日が23.5時間、などという風に「揺らぐ」という話など聞いたことがない。
でも例えば株価はどうだろう?株価は人の投資活動から決定されている。そこには意思が明確に絡んでいる。ところがその結果として起きる株価の変動はどうだろう? これが実は典型的な揺らぎの性質を持つのだ。これは私にとってはとても驚くべきことなのだ。
まず以下の図を見ていただきたい。

これは高安 秀樹先生の  高安 秀樹() 経済物理学の発見 (光文社新書、2004)から拝借した図だが、同様の図はいくらでもネットで探すことが出来る。左右では時間のスケールが違う。左は数か月間の間のある株価の変動であり、右はそのうちの数週間分を取り出して拡大した際の株価の変動である。(もちろん縦の時間のスケールも調整してある。) そして左の図の直線に近いと思われる部分を拡大しても、やはり波打っていることを示しているという図である。先ほど揺らぎは「スケールフリー」だと表現したのはこのことである。)