2019年12月17日火曜日

揺らぎと失敗学 推敲 4

失敗を生み出す「注意の揺らぎ」

ここで事故や失敗が生じる原因を揺らぎという観点から概括したい。私はこれを二種類の揺らぎの複合産物と捉える。一つはそれこそ自然界の揺らぎ、私たちが第一部で見たような揺らぎである。万物は揺らぎ、大気は揺らぎ、大地は揺らぐ。それがさまざまな気象現象を生み、地震を招く。そして人の心も揺らぐ。事故は双方の影響を受けて生じる。
例えば福島原発事故を考えると、一方では予想を超えた津波という現象が生じ、それは私たちの予想を超えた出来事、自然界の「大揺れ」と言えた。しかし原発の事故を防ぐための最大限の努力をするうえで、地下の電力設備の停止を回避するための十分な方策を施していなかったという意味では、これは一種の人災であったとも言える。
これらの事故のうち特に私たち人間の心の揺らぎが大きな位置を占めた場合に、私たちはそれを失敗と呼ぶのであろう。そうでない場合はそれらは事故として処理される。それは私たち人間に起きた生理現象や疾病についてもいえる。飛行機のパイロットが突然心臓発作を起こして倒れ、飛行機が操縦不能になったとしたら、これは医学的な事象であり、失敗ではない。ただしそのような事態が生じることを踏まえて副操縦士を配備しなかったことが問われる際もある。その場合には失敗とも言えるだろう。
では失敗、心のレベルでの揺らぎの本質は何かと考えた場合、それは結局私たちの注意力の揺らぎではないかと思える。私たちの注意力は常に一定とは限らない。それは常に揺らぎ、その揺らぎには大きなものも小さなものもある。そしてその注意力が大きく低下した際に失敗が生じると見るべきだろう。そしてその注意力は、覚醒時に求められるだけではない。しばしば眠っている時にも常に問われる。
最近こんな例があった。あるテレビ局のアナウンサーが寝坊して、番組が彼女なしで開始されたという。あるネットの記事を参照する。
2019.3.4 11:25
遅刻で番組欠席のTBS古谷有美アナが謝罪…国分太一「きょうは起きれたんですね」
 
TBSの古谷有美アナウンサー(30)が4日、TBS系「白熱ライブ ビビット」(月~金曜前8・0)に生出演。2日のTBSラジオ「土曜朝6時 木梨の会。」(土曜前6~8)の生放送を寝坊したために欠席したことについて謝罪した。MCの国分太一(44)に「きょうは起きれたんですね」と早速いじられ、古谷アナは深く息をついた。そして「先週の土曜日、ラジオの番組を寝坊するという、人としてあるまじき過ちを犯してしまいまして、大変皆様にご迷惑をおかけしました」と神妙な面持ちで謝罪。「詳しいことは土曜日のラジオにて、しっかりお話させていただきたいと思います。本当に申し訳ございませんでした」と深々と頭を下げた。 
 これをここに転記していて、私自身緊張してきた。とても他人事には思えない。だって、遅刻ってよくあるではないか。