2019年11月5日火曜日

カオス 推敲 3


「カオス」と揺らぎ、予想不能性

 以上「カオス」についてごく簡単な紹介をしたが、おそらく私がこの「カオス」に対して感じる面白さを伝えることは難しいだろう。と言うよりは私もどうしてこのカオスにこれほどまでに心を動かされるかが今ひとつピンと来ていない。そこでここでは揺らぎのテーマと「カオス」について確認しておきたい。
ひとことで言えば揺らぎはカオスの一つの表現であるということだ。
たとえば次の数式を見ていただこう。
19,864.09 20,812.24 20,663.22 20,940.51 21,008.65 21,349.63 21,891.12 21,948.10 22,405.09 23,377.24 ・・・
やたら小数点以下が多いが、先ほど見た「定常状態にならない」「繰り返さない」システムという定義で見たような「カオス」的な動きを見せている。そしてこの数字は2019年の一月からのダウ平均株価の月ごとの値だ。
揺らぎの典型例として、株価の上下運動を挙げたことを思い出そう。そしてその株価の値は「カオス」的な動きを見せるのである。恐らくダウ式平均株価という値が用いられる限りは、その数字の列に一定の法則が見いだされることはありえない。この様に見た場合は、冪乗則におけるファットテールの部分がそうであったように、揺らぎは「カオス」なのである。ただし「カオス」は揺らぎかと言うとそうではないかもしれない。「カオス」はべき乗則に従うか、と言えばそうでもない。例えば一定常状態に至ることのない「カオス」的な数列を並べてみても、揺らぎとしての雰囲気を全く示さないかもしれない。全く規則性の感じられないギザギザで、私たちの体験とは全く相いれないかもしれない。
揺らぎとは自然のある種の在り方であり、概ね予想が付き、時々不規則な動きを示すという性質を有する。ところが「カオス」は人工的で仮想的なものをいくらでも作り上げることが出来る。そこが違いと言えるのではないだろうか。