揺らぎを論じる上でアトラクターの概念はとても重要になってくる。といってもアトラクターという概念がつかめないと、こう言われてもピンとこないだろう。大体アトラクターって何だ!
台風10号の雲の様子(情報通信研究機構 「ひまわりリアルタイムWeb」8月14日より) |
そこでアトラクターの意味や面白さが伝わるために皆さんに思い描いていただきたいのは、台風である。数日前にお盆休みに突入しようとしていた日本列島は大騒ぎだった。超大型の台風10号が日本に接近し、明日(2019年8月15日)には山陽新幹線が全面的に運休を計画したほどだった。なんというはた迷惑。いくらテクノロジーの進んだ現代社会でも、南方海上に数日前に発生したその頃はまだ小さな渦巻だったのに、どんどん発展して日本国民を混乱に巻き起こすようになることを決して食い止めることは出来ないのだ。太平洋上に巨大扇風機を何万台か持って行って空気を反対方向にかき回しても無駄だ。台風10号が周りの大気に影響力を及ぼし、ぐんぐん自分の渦巻きに巻き込んでいくのをとても阻止できない。何しろ北半球の太平洋領域の空気はみなこの大渦巻を維持し、それに引き寄せられ(attract)、さらに発達させるように動いているからだ。誰もこれを止められない。・・・・・ これがアトラクターの現れ方だ。
2019/08/05 16:59 ウェザーニュースより |
しかしこれほどすごい力を及ぼす台風10号なのに、その始まりは案外よくわからない。一つ確かなことは太平洋上のどこかで渦巻らしきものが生まれ、その時は同時におそらくいくつかの渦巻きもあったのだろう。(台風が発生する南太平洋上のレーダーを見ると、いかにも何かつむじ風のようなものがいくつも起きていそうな複雑な雲の動きを見ることが出来る)。
いくつかの候補の中から一つだけがグングン大きくなっていった。この話はどこかで聞いたことはないだろうか? そう、冪乗則で見た地震の起き方などである。
そこで一転目を世界の情勢に向けてみる。日本と韓国が対立し、韓国では反日運動がかなりの盛り上がりを見せている。その勢いは簡単なことでは止められないし、勢いが勢いを生んで大きなうねりになっていくのを止められそうにない。これもまた「アトラクター的」ではないか。
アトラクターを視覚的なイメージに捉えていただいたうえで定義に戻ろう。ネットで調べると次のような定義が見られるだろう。「力学系において、運動がそこに終息していくような点ないしは集合である。アトラクターの形状は点や曲線、多様体、さらにフラクタル構造を持った複雑な集合であるストレンジアトラクターなどをとりうる。カオスな力学系に対してアトラクターを描写することは、現在においてもカオス理論における一つの研究課題である。」(Wikipedia「アトラクター」の項を一部改編)
これでわかるだろうか? まず力学系、という意味が不明である。重力などの力が働くという話だろうか? (つづく)