もう一つインシデントが起きる例も考えている。カミさんの運転する車の助手席にいて思うことだ。例えば車が左折しようとする。横断歩道の信号が青になり、歩行者が五月雨式にわたりだす。そのうち青信号が点滅をし始める。車は歩行者が渡り終わるタイミングを見計らって、車を進めようとするが、その時猛ダッシュで信号を渡ろうとする歩行者が目に入る。一番事故が起きやすいタイミングだが、実はとてもよくある光景だ。
もちろんこのような場合99.9パーセントは事故は起きない。運転手の側もこの瞬間がいかに事故を起こしやすいかをよくわかっている。
しかし一番事故が起きやすい状況はこうではないか。ここは完全に私の想像であるが、不規則行動Aが生じた瞬間、左側方からも歩行者が近づいてきていた場合だ(不規則行動B)。つまり左からの歩行者に気を取られていて右からの歩行者に対してノーマークになり轢いてしまうというパターンであり、運転者はいわば同時に起きた二つの「不規則行動」に対する対応能力は非常に低くなるからだ。
例えば意識は30%ほどを全方向に注意を向けるために用いているとしよう。それだけあれば一つの不規則行動には余裕で対応できるだろう。そして不規則行動Aに27%を使ってしまうと、のこり3%で不規則行動Bに対応できる可能性は低くなる。そしてもしそれでも二つの不規則行動に対応できても、三番目の不規則行動に対してはおそらく全く対応できないだろう。それは例えば車の後方からやってきて車を回り込むように横断歩道を渡ろうとする自転車である。もし不規則行動が起きる確率が p なら、ヒヤリハットは p の確率で生じ、それが二つ同時に起きた場合、すなわちp2の確率で事故寸前の事態が生じ、またそれが三重に重なった場合、つまり p3 の確率でほぼ確実に事故が起きるということだ。
例えば意識は30%ほどを全方向に注意を向けるために用いているとしよう。それだけあれば一つの不規則行動には余裕で対応できるだろう。そして不規則行動Aに27%を使ってしまうと、のこり3%で不規則行動Bに対応できる可能性は低くなる。そしてもしそれでも二つの不規則行動に対応できても、三番目の不規則行動に対してはおそらく全く対応できないだろう。それは例えば車の後方からやってきて車を回り込むように横断歩道を渡ろうとする自転車である。もし不規則行動が起きる確率が p なら、ヒヤリハットは p の確率で生じ、それが二つ同時に起きた場合、すなわちp2の確率で事故寸前の事態が生じ、またそれが三重に重なった場合、つまり p3 の確率でほぼ確実に事故が起きるということだ。
私はこれを書いている今では当たり前のことを言っているように思えるが、これを思いついた時には目からうろこ、という気がしたのを覚えている。なぜならこのことは「事故は絶対になくならない」ということの確証を私たちに示しているように思えるからだ。そしてあたかも日常のごく自然な一場面でも、重大事故を人工的に作り上げることができるということだ。ごく普通の、いや優良な運転者も、もしこれらのアルアルが偶然三つ重なれば、ほぼ確実に人身事故を起こすだろう。これはハインリッヒ則を説明する一つのわかりやすいモデルではないか。