2019年7月22日月曜日

冪乗則と揺らぎ 4

冪乗則のことが、まだ本当にはわかっていないので思考を続ける。これまでの考察からは、どうやら冪乗則にしたがうものにはある種の歴史が読み取れそうだということがわかるだろう。小さな砂粒大のかたまりのずれが、場合によっては連鎖反応を起こして巨大な地震につながる、という場合、明らかに時間の流れに即した動きが読み取れる。ただそのような爆発的な動きがあまり感じられないものもある。
ここに示した画像をご覧いただきたい。これは高熱で溶けた銅を冷やすと表面に広がっていく結晶だという。ちょうど雪の結晶が形成されるのと似ている。Witten and Sander’s game  というのが、この画像に示されるような現象をさすというのだが、これは「拡散律速凝集」Diffusion-limited aggregation (略してDLA)と呼ばれるそうだ。最初にどこかに小さいチリなどを核として銅が固化すると、あとは近くの分子が次々とくっついていく。そしてこのような木の枝のような形が形成されていく。拡散律速、という意味は、銅の分子がまばらに、拡散された形でたまたまできかけた結晶にくっつくというやり方が律速段階になっている、あるいはスピードを制限しているということであり、要するにバタバタッと一気に起きるという形はとらないという意味だそうだ。これはコンピューターでも簡単にシミュレーションを行うことが出来る。
さてこのDLAも冪乗則にしたがった形成のされ方をするという。中央の最初の結晶が生まれた部分を拡大していくと、最初の枝分かれが生じていることがわかる。この写真を見る限り4つあるようだ。そしてそれぞれの枝がどんどん広がってできた様子がわかる。おそらく時間としてはかなりゆっくりで、最初の点からじわじわ広がっていくことが、コンピューターのシミュレーションからもわかる。さてここで何が冪乗則にしたがっているかと言えば、枝の大きさである。小さい枝は限りなく多く、そのサイズを大きくしていくと、数は減っていく。最後にはこの全体が一つの巨大な枝として出てくるわけだ。そしてその枝を大きさの順に並べると、ロングテールが出来上がる。さてこの場合の冪乗則はそこに巨大な連鎖反応と呼べるような出来事は起きていないようだ。ここに見られる大物は、最初に枝分かれをして、あとは途切れることなく枝を伸ばすことが出来たもの、ということになる。
このテーマに沿って調べていくうちに、Paul Bourke という人のサイト(DLA - Diffusion Limited Aggregation)に行き当たったが、これが素晴らしい。そこに私が一番知りたいようなモデルが出ていた。 


この図のどこがすごいのだろうか。これは上から降ってきた点が下に積もっていくという形で枝が成長していく様子を表している。よく見るとほとんどが小さな枝で終わっているのに、時々巨大な枝が形成され、それらの分布の仕方が冪乗則に従っているというわけだ。これほどきれいなモデルがあるだろうか。そしてこれと類似のことがこの世界で起きていると考えることができるわけだ。