2019年4月25日木曜日

アトラクター 2



ちなみに昨日のローレンツの図、一晩放置しておいたらこうなった。すっかり中が埋まってしまった。
さてこの図を見せられても、面白そうではあっても結局何のことか分からないだろうし、自然現象はアトラクターにあふれているといってもその意味が分からないだろう。そこでローレンツの方程式三本を思い出す。

この式は複雑だが、元もと彼はこれを気象の観測に考えた。そしてかなり簡素化した流体力学の式として立てたのだ。たとえばxは水平速度、yは垂直速度、zは温度などと仮定しよう。そして水平の速度は、垂直速度の差に従って変化している、という観察結果が得られて、それが第一の式となる。第2、第3の式もこの変数のあいだの関係から得られたとしよう。つまりそれぞれのファクター同士の相互関係が実験から予想される場合に、それらを組み合わせて変化を見ているのだ。これは数学的には説けないので、コンピューターでシミュレーションをしていく。そしてある時の風の水平、垂直速度と温度の変化を三次元で表すと、例のバタフライの図が描けるという事だ。勿論このバタフライは空のどこを見ても見えない。もし誰かがある場所で風の水平、垂直速度と温度の変化をご丁寧にも3次元のグラフに描いたら初めてわかることだろう。しかし体験としていえることは何となくそこでの風の向きがしばらくは揺らぎつつも一定方向を保っていたのが、途中で急に反対方向に変化するという事を感じるかもしれない。それが蝶の一方の翼からもう一方に急に移るときだ。
あるいは土星の一つの衛星を考えよう。おそらくその衛星はたくさんの恒星、惑星の間の力を受けているから、その速度をX(太陽からの距離)Y(土星からの距離)Z(すぐ近くの衛星からの距離)・・・などの微分係数で表すことが出来る。その結果として得られたのが、何千万年もの間土星を回っていくうちに他の星との関係からはじき出されて行ってしまった衛星の動きを表していたという事になろう。その場合その衛星の動きの面白いところは、それこそ何百万回となく土星の周りを回転していながら、つまりそれが一定の期間アトラクターとしての役割を持ちながら、最後にはどこかに消えてしまったという事だ。長い間連れ添いながら熟年離婚したカップルのようなものだろう。この場合、蝶々の羽の一つからもう一つに移ろうとして失敗してアトラクターを飛び出してしまった例と考えることが出来るだろう。