2019年4月1日月曜日

解離の心理療法 推敲 46


いわば黒幕人格のもっとも典型的な形が、このタイプでしょう。先に示した三つの特徴を備えています。以下の事例にあるように、面接室でのその扱いはいくつもの困難さを伴いますが、この事例のようにいくつかの好条件が重なれば扱うことが出来ます。ただしその扱いは限定的と言ってよいでしょう。

タカコさん(48歳・女性)とタエさん(黒幕人格・男性)

〈中略〉
 
〈解説〉
 攻撃性や破壊性の強い黒幕人格との面接は特に慎重を要します。この事例も面接室の中で鋭利な物を探し、自分に突きつけようとする場面があり、治療者だけでは止められませんでした。咄嗟のときに、患者を守ることが出来る環境づくりを準備することは、治療者にとって重要な課題です。通院時には付き添いの家族の協力も必要となるでしょう。また攻撃性が強い黒幕人格の場合、眠らせておくのか、面接場面で取り扱うのかは意見が分かれるところです。眠っている黒幕人格を無理に起こすことは避けるべきです。しかし黒幕人格が活動的になっている場合や、治療者に会おうとしている様子が感じられる場合は、それに応じて面接した方が良いでしょう。一人の人格として扱われたことで、落ち着いていくことがあります。ただしそのためには治療者の側も身を守り、余裕を持って黒幕さんと向き合い、対処するための工夫が必要なのです。