2019年3月15日金曜日

複雑系 12


何か、このピクセル化、の話が面白くなってしまった。実際にはあり得ないホラーの話。こんなニュースを想像する。「顕微鏡を発見したヤンセン父子は、さっそく微生物を見てみることにした。彼らは早速ミジンコをプレパラートに載せて低倍率で見てみた。すると見たこともない巨大なミジンコが動いているではないか。そしてなかにはいろいろな機関が複雑に動いているようだ。そこで顕微鏡に改良に改良を重ね、倍率の高いレンズを作り、再びミジンコを見てみた。うん、もっといろいろ見える!しかしおかしいことに気が付いたのだ。何となくこれまでスムーズに見えていたミジンコの微細構造が、何かカクカクとした不思議な輪郭を持っているではないか? 不思議に思った父子は、さらに倍率の高いレンズを何年も作り上げて、またミジンコをのぞいてみた。さらに10倍も倍率を上げることが出来た彼らが覗いたものは・・・・。なんとミジンコの体の内部はサイコロ状の、それぞれに色のついた構造物の集合だったのだ。いやミジンコだけではない。あらゆる物質が、倍率を上げていくと、サイコロにより構成されていたのである。これがのちに科学者がピクセル、ないしボクセルと呼ぶことになる、物質の構成単位なのであった・・・・・。」つまりその倍率で、もう私たちの物質世界はフラクタル性を失なったという架空の話である。実際はもちろんそれは原子である、という事になり、そうかと思ったら陽子や電子という事になり、さらには素粒子になり、クオークになり・・・最近はどうなっているのだろうか? 超ひも理論という事もあったな。結局ボクセルに行き着かず、というよりは一定のレベルのミクロの世界から量子力学的な振る舞いが支配するようになり、その意味ではフラクタル性が崩れてしまうのだろうが。
この想像、別の方向にも持って行けるかもしれない。「ハッブル望遠鏡で何億光年先まで見えるようになったのはいいが、天文学界では大騒ぎになっている。なんと何億光年先まで見ると、やたらにカクカクした輪郭が見えるようになったのだ。そこで改良を重ねてさらに倍率を高めたレンズを搭載したハブル2を打ち上げ、宇宙のはるか果てを眺めると ・・・・・(以下、先ほどと同文。)」こんなことはありえないと思うだろうが、
たとえばハブル望遠鏡のこんな画像を見ると、思いのほか、構造物のようなものが見える。たとえばこの画像などは、何かどこかの海岸線のようにも見える。結局マクロにしてもミクロにしても、物体の世界に関してはフラクタル性が(私たちが観測できる限りでは)保たれているという事だろうか。
 さて話は逸れてきているので修正するが、結局私たちにとっての感動とは、私たちが想像していた以上のレベルでフラクタル構造を見ることが出来たことの感動だろうか。顕微鏡のない時代には、ミジンコの中にあれほど微細なオルガネラが存在することなど想像しなかっただろう。だから最初の顕微鏡像は感動的なのである。