2019年2月2日土曜日

複雑系 1

複雑系 1

複雑系としての身体が生み出す心の病
 考えるだけで気が遠くなるということがある。例えばコンピューター。どんな複雑なコンピューターのプログラムを操っていても、そのもとのもとのもとをたどると、0か1かの信号に従ったプロセスである。読み取り機が0か1の信号を読み取り、簡単なルールに従って先に進んでいく。いわゆるチューリングマシンだ。それをものすごーく微小の素子を使って、ものすごーぐ高速で行うことで巨大なプログラムが動いていく。私がこうやってワープロで文字を打っても、一つ一つに膨大な素子による信号の読み取りがあってこそ、初めて正しい文字が打ち込める。勿論そんな素子たちのことを思いやりながらパソコンを打ってはいられない。ただ考え出すと気が遠くなるのだ。そしてそれを世界中で何百万何千万という人たちが行っていることを考えると・・・・。いやおそらく考えられないのだ。
しかしたとえば私たちの体で起きていることを考えても、おそらくコンピューターどころではないことが起きている。数10兆の体細胞(だったかな?)、その細胞のすべてに(といっても核のない赤血球などは除かれるが)DNAの長い紐が格納され、その長さはおよそ2mで、それがわずか数ミクロンの細胞核に入っているのである! そしてそのDNAにはおよそ60億個の塩基対が含まれている。恐ろし―。そして塩基対がいくつか集まってタンパク質を形成するわけだが、タンパク質は正しい形が整っていることで意味を成す。タンパク質は単なるアミノ酸の鎖ではなく、それが3次元にうまく形を成すことで、鍵穴に入る鍵のごとく、受容体にくっついたり離れたりできるのだ。生命活動とは、たとえばホルモンを分泌するとは、タンパク質が遺伝子の塩基対から情報を拾って作られるわけだ。そしてそしてそのタンパク質がいくつかのアミノ酸がつながる形でDNAの塩基対の鋳型から作られ、ちゃんとした形になるように、それを守ってあげる別のたんぱく質があって・・・・。一つのタンパクがようやく出来上がるまでに数分かかるという。ちょうどさなぎの殻を破って生まれた長が羽をゆっくり広げるまでは絶対邪魔されないようなことが、タンパク質1個が生まれるだけで小さな小さな細胞の中で起きている。ああ。ため息が出てしまう。
 何を言いたいかと言えば、私たちの体は途轍もない複雑系で、そこで何が起きているかは全く知られていないのであり、それが心に及ぼす影響なども全く持って未知数なのである。