2019年1月11日金曜日

忘れていたCPTSD 4  


3点目は、解離の概念を理解し、解離・転換症状を扱うことを回避せず、治療的にそれとかかわるという姿勢である。最近では精神分析的な治療のケース報告にも解離の症例は散見されるが、フロイトが解離に対して懐疑的な姿勢を取ったこともあり、なかなか一般の理解を得られていないのが現状である。解離を扱う際の一つの指針として挙げられるのは、患者の症状や主張の中にその背後の意味を読むという姿勢をと同時に、その表面に現れた意味を受け取るという姿勢である。古典的な精神分析が掲げた抑圧モデルでは、患者の表現するもの、夢、連想、ファンタジーなどについて、それが抑圧し、防衛している内容を考える方針を促す。しかし解離モデルでは、たまたま表れている心的内容は、それまで自我に十分統合されることなく隔離されていたものであり、それも平等に、そのままの形で受け入れることが要求されると言っていいであろう。この点が重要なのは、解離の症状はフラッシュバックとしての意味を有し、ある意味では過去に起きたことが再現されているからである。しかもこれは患者の見る夢についても同様だ。患者から折檻されている夢を見、その報告を受けた治療者は、それをある種の象徴的な意味合いを持ったものとして解釈するだろうか。ただしこの問題を考えれば直ちに納得する点がある。それはおそらくそのような夢ですらある種の加工やファンタジーを含んだものである可能性がある。その意味では患者の示す症状や夢に、そのものが表すものと、それが象徴、ないし代弁する内容の両者を見据えるという必要が生じるのだ。