2018年12月9日日曜日

解離の本 49


この攻撃者との同一化というプロセスが、具体的に脳の中でどのような現象が生じることで成立するかは全くと言っていいほど分かっていません。唯一ついえるのは、私たちの脳はあたかもコンピューターにソフトをインストールするのに似たような、自分の外側に存在する人の心をまるでコピーするかのようにして自分の心に宿してしまうという現象が起きるらしいということです。それが、たとえば誰かになり切った様にして振舞う、という意味での同一化と明らかに異なる点です。こちらの場合はあくまでも主体は保たれていて、その主体の想像の世界で誰かの役を演じているわけです。しかし解離における攻撃者との同一化では、その誰かが文字通り乗り移って振舞う、ということがおきます。
皆さんは憑依という現象を御存知でしょう。誰かの霊が乗り移り、その人の口調で語り始めるという現象です。日本では古くから狐に憑くという現象が知られてきました。霊能師による「口寄せ」はその一種と考えられますが、それが演技ないしはパフォーマンスとして意図的に行われている場合も十分ありえるでしょう。
現在では憑依現象は解離性同一性障害の一タイプとして分類されていますが、それが生じているときは、主体はどこかに退き、憑依した人や動物が主体として振舞うということが特徴です。攻撃者との同一化を図を用いながら具体的に考えて見ましょう。この図では攻撃者は赤いイガイガの図で描かれています。攻撃者の心の中には被害者(青で示してある)のイメージがあります。