2018年12月2日日曜日

解離の本 46


4-2 行為の象徴性
自傷の方法には様々なものがあります。最もよく知られているのは腕や手首を刃物で傷つける、いわゆる「カッティング」と呼ばれるものです。しかしそれ以外にも、壁に頭を打ちつけたり、タバコの火を自分の体に押しつけてやけどを負わせたりする自傷もあります。これらは自分の身体レベルで快感を伴った感覚を誘発することを目的としてますが、自らに苦痛を負わすだけとしか思えない自傷もあります。いわゆるミュンヒハウゼン症候群に属する自傷では、たとえば入院中、点滴液の中に便を混ぜて感染症を引き起こそうという行為なども報告されています。このように自傷には様々なものがありますが、個人がどの方法を選択するか、そこに何らかの象徴性を感じるという場合が結構あります。
そもそもカッティングにより血を流すという行為が、それにより自分が生きている、「血の通った人間」であることを確かめるという意味を持つ場合が少なくありませんが、より象徴性が高いものもあります。たとえば、性被害体験を有するある患者さんは、“漂白剤を飲む”という自傷行為を繰り返していました。なぜそうしようと思ったのか、患者さん自身は、全く無自覚でしたが、後に「体の“汚れ”を清めようとしていたのかもしれない」と述懐されました。このような、現実に起きた嫌な出来事を象徴化し、苦痛を乗り越えようとするかのような自傷も少なくありません。

【症例】イズミさん(20代、女性)

(以下略)