2018年11月27日火曜日

解離の本 41


報酬系の話に入ったが、やはりこのテーマは書いていてコーフンを覚える。加藤さん、良くかけているよ。

3-2 自傷と報酬系
動物の自傷の中で、脳内麻薬物質エンドルフィンについてふれましたが、現代は、多くの心理学的現象を脳科学の視点からも説明する様になってきています。ここでも脳内の「報酬系」という部分の働きから自傷を考えてみましょう。
人間や動物の欲求が満たされたとき、あるいは満たされると予期されるときに興奮し、快感を生み出している神経系の仕組みを脳内報酬系とよびます。この部分が興奮することでドーパミンという化学物質が分泌されますが、これは快感物質とも呼ばれています。人間や動物は基本的にはこの報酬系によるドーパミンの分泌を最大の報酬とし、それを常に追い求めて行動するという性質を持っているのです。
ちなみに、この報酬系は、1954年、オールズとミルナーというふたりの若い研究者によって発見されました。彼らは、ラットの脳に電極を埋め込み、いくつかの実験を行っていましたが、脳の色々な部分を刺激し実験していくと、ある部分の刺激に対して、ラットは強く反応し、レバーを執拗に押すことがわかりました。それは、ときに1時間に7000回にもおよぶハイペースで、空腹であろうと極度の疲労状況であろうと、餌を食べたり休んだりすることなくレバーを押し続けてしまうという様子が観察されたのでした。その様子から、彼らは、この部位への刺激が快につながっているのではないかと考えたのです。まさに、快感中枢、報酬回路が発見された瞬間でした。
この報酬系の発見以前は、人を突き動かしているのは、攻撃性や性的な欲望といった本能的なものであると考えられていました。ただしそれらは無意識レベルにしまわれていて、間接的に行動に表されるものだ、という精神分析的な考えが主流でした。また行動主義を基盤とした心理学の観点からは、学習や行動の発達は罰の回避のみで説明できると考えられていましたそして脳のどの部分を刺激しても不快しか生じないと考えられていたのです。オールズとミルナーの報酬系の発見も偶然の産物でしたが、この発見により人や動物は主として快感(報酬)を求めて行動するという、いわば単純すぎるほど単純な原則の存在が明らかになったのです。