2018年10月8日月曜日

パーソナリティ障害はまだ・・・ 10


引き続きDutton の本を読んでいく。今度は報酬系の話だ。カリフォルニアで行われたある実験。サイコパスと正常人にある実験を行い、学習効果を見る。あるタスクを間違えた場合に、電気ショックを与えると、サイコパスはそれによる学習効果が低かった。要するに彼らは「痛い目を見る」ことで自分の行動をあまり変えようとしない。ところが金銭を与えたり、「ショックを与えない」という報酬を与えると、これには俄然反応したという。そこで彼らに覚せい剤を与えたところ、サイコパスは、正常人の4倍のドーパミンを分泌したという。それだけ報酬を求める傾向が強いということだ。そしてそれを求めるときは一種の視野狭窄が起き、他の事に意識がむかないというわけだ。
この次に書いてあること。これがおそらく本書の最もハイライトな部分だ。ある実験(詳しくは省略)は、実はサイコパスは人の気持ちを読む力が正常人よりも高いことを示していたという。どういうことか。苦しみを示している他人を見て、彼らの扁桃核はあまり興奮しないが、その代わり背外側前頭前野の活動が増している。ここは他者の情緒を認識する部分であるという。他人の痛みを感じる力は損なわれていても知る力は選りすぐれている・・・・・。これがサイコパスの正体ということか。
ちなみに感じる力というのを示す一つの指標は、あくびの伝染だとも書いてある。人と犬の間でもこれは起きる。しかしサイコパスの場合はあくびの伝染はおきにくいというわけだ。
ここでダットンさんは面白いことを言っている。人が腕を切って血を流している映像を見たときのサイコパスの脳の働きは、経験ある外科や鍼灸師の脳の活動に似ているという。痛みを特に感じず、むしろ冷静さや観察力に関与する前頭葉の活動が高まっていた。つまりそれらのエキスパートがいたる脳の状態に、サイコパスたちはすでに至っているというのだ。