2018年10月7日日曜日

パーソナリティは ・・・ 9


 Dutton さんの本に戻る。サイコパスの能力の話の続き。彼らが人を騙す能力について。
 サイコパスの被告は、裁判などで反省の気持ちを表すことに非常に長けていると言われる。これは彼らが本来反省の念を持ちにくいということを考えると実に不思議なことである。つまりサイコパスの人たちが普通の人たちより、偽りの感情を表すことに長けているということだろう。それを示すようなテストを Stephen Porter という心理士が行ったという。彼らは一般人とサイコパスに、ある感情を演技するように指示し、その表情を早回しのカメラで撮り、その表情の一コマ一コマを調べた。例えば悲しい顔の人の写真を見て、反対の嬉しそうな顔をするように指示する。すると一般人では、うれしそうな表情を作っても、肉眼では見えないような微細な悲しみの表情が混入してしまうのに対し、サイコパスにはそれが少なかったという。つまり見せたい感情をより完璧に真似るのだ。これはたとえばサイコパスの人が悲しみを演技するときには本当の涙を流せる、ということにもつながる。悲しくのないのに。そしてこれは彼らが嘘をつくときにも発揮されるのだろう。「俺は嘘ついてんだなあ」と思いながら嘘をつくのではない。嘘の内容をかなりのレベルで信じ込み、しかしそれは妄想ではないというわけだ。もちろん解離でもない。そんな特殊な能力を持っているという話になっている。(ちなみに Porter 先生のお弟子さんの研究によれば、サイコパスの人たちはほかの人が嘘の感情を演技していることを見抜く力にもたけていたという。もうこれは一種の才能といっていいだろう。それならサイコパス同士が嘘をつきあったらどうなるのだろう?)
ちなみにここら辺の Dutton さんの描写には、諜報部員も同列に扱っている節もある。そう、有能なサイコパスの持つ能力は、二重スパイとしての能力にも共通しているというのだ。オソロシイ。
 その後に書かれているのは脳の話だ。サイコパスでは鈎状束uncinate fasciculus という神経繊維の束が十分に発達していないという。これは前頭前野(意識、道徳心その他の座)と扁桃核(感情の座)を結ぶ経路であるが、それは道徳的な判断が感情的な反応を引き起こす力の低さを表しているという。