ポリベイガル、まだ納得していない。一種の流行なのだろうか?でもトラウマの世界で明らかに注目されている。やはり理科系である以上、Porges 先生の原著に立ち戻りたい。何しろネットでただでダウンロードできてしまうのだ。
Porges
SW. (2009). The polyvagal theory: New insights into adaptive reactions of the
autonomic nervous system. Cleveland Clinic Journal of Medicine, 76:S86-90.
難しい話は省略するとして、彼は心臓に対する迷走神経の二つの相矛盾する作用に気が付き、研究し、結局迷走神経が二つに枝分かれしていることをみつけたらしい。迷走神経とは、何日か前に書いた、第10神経、一本だけ体の奥深く伸びていく(迷走している)神経だ。解剖学の歴史は長く、また肉眼で観察される対象でありながら、こういうことも起きるらしい。ともかく彼が主張しているのは、脊椎動物には迷走神経が存在しているが、基本的には無髄であり、哺乳類になって、有髄の迷走神経が成立した、というのだ。そしてそれも迷走神経核からしっかり出ているという。ポージス先生は、この新しい迷走神経、つまり腹側迷走神経VVCは通常は下位の、つまり古くからある交感神経系やDVC、つまり背側迷走神経を抑制しているが(昔から言われているジャクソン仮説だ)、ピンチの時は、この最新のシステムが最初にやられてしまい、下位のシステムが働き出すという。
ここら辺は分かるんだけれど、私にはどうしても疑問なのが、どうして第5,7,9,11神経まで迷走神経になっちゃったの?という単純な理由なのだ。VVCの枝を追っていくと、ひそかにこれらの神経にも入力していた、とかいう記述があれば、一気に納得するのに。そこでネットで手に入れたもう一本にも目を通して見る。これはずいぶん古い。彼がこの理論を言い出したころだ。
Porges SW(1995)Orienting
in a defensive world: mammalian modifications of our evolutionary heritage. A
Polyvagal Theory.
Psychophysiology. 32:301-18.
.これを読んでいくと、それらしい記述があった。「it has been demonstrated that visceromotor functions regulated by
the ventral part of NA provide the parasympathetic support for the somatomotor
projections from NA and trigeminal and facial nerves.神経解剖学的な研究によると、内臓運動機能は、NA(擬核、迷走神経の出ている核)の腹側部により調節されているが、それらはNAや三叉神経や顔面神経からの身体運動投射に対する副交感神経系のサポートを提供している・・・・・」
ややこしくて漠然としか分からないが、迷走神経と、第5、第7神経(おそらくは同じ感じで第9、第11神経とも)連絡を取り合い、社会生活を営む上での主として顔面における運動と自律神経とが強調するような仕組みが出来上がっている。まあこの文章でなんとなく納得した、ということになるだろうか。