2018年8月2日木曜日

解離―トラウマの身体への刻印 13


12章あたりを読んでいる。やはりこの本は「読物」として面白い。このテーマとは直接関係ないが、第一次世界大戦でPTSDの前身の概念である「シェルショック」が提唱された際に、それが戦意を削ぐということで、イギリス政府がその使用を禁止したとある。もちろんPTSDをきたす患者は出たが、それに対してつけられたのが、NYDN (not yet diagnosed, nervous、神経症的だがまだ診断されていない状態) という診断名、つまりUFOのように「未確認の状態」とよばれたというわけだ。それを診た医者が下す結論は「この男はもともと戦闘体験に耐えるだけの強さを備えていなかったのだ」だったという。それからVDK先生がアメリカの軍人病院で体験した、第二次世界大戦の戦闘兵について書いてある。彼らの多くはPTSD の診断を下すべき状態にあった。しかし彼らは主として身体症状を訴えていた。頭痛、腰痛、消化器症状・・・・。この p189の部分は、書こうとしている論文への引用に値する。「身体は依然として刻印を残す。彼らは消化不良を起こし、動悸がし、パニックに翻弄される。Their bodies still keep the score; their stomachs are upset, their hearts race, and they are overwhelmed by panic.」 
これも驚くべき記述。1974年の「カプラン・サドック」の精神科テキストには、近親姦は極めてまれで、110万人に一人の率で発生する…。そのような体験は統合失調症に罹患する可能性を低くし、社会適応をよくする・・・・」なんと!本当にこんな記述があったのだろうか?
続いて一番印象に残った記述。これも「身体への刻印」とは異なるが…。1970年代初期になされたLinda Meyer Williams 医師の研究。10歳から12歳までの性的虐待を受けた少女 206人をフォローアップしたという。17年後、すなわち少女たちが2730歳になったころ、彼女たちのうち136人に面会することが出来た。すると38%の人たちは、記録にも残っている虐待をそもそも覚えていず、12%は、最初から虐待などなかったと言ったという。