やはりこの本は面白い。VDK先生はベトナム帰りの兵士8人に頼んで、暴力的な映画(戦闘シーンあり)と平和的な映画を見てもらい、どちらの映画を見ていたほうが、氷水の中に手を長く浸していられるかという実感をやった。(侵襲性のない痛み刺激を与える、となるとこの手法がよく用いられる)。すると暴力的な映画を見ていたほうが、30%長い時間手を浸しておけたという結果が得られたという。そしてこれがなぜ戦闘兵が手術の際に麻酔を必要としないことが多いということを説明するという。要するにエンドルフィンだ。P33には扁桃核とセロトニンの関係も出てくる。扁桃核が過剰反応しないためには、そこの部位がどれだけセロトニンを含んでいるかによるという Jeffrey Gray 先生の研究報告。これと関係している可能性のあるサルの研究。ボス猿は高いセロトニン濃度を示すという実験結果。あるいはセロトニンの濃度を人工的に上げられたサルはボス猿にのし上がるという実験結果。つまりセロトニンが低いとビビリ症、高いと肝が据わる、と言い換えることができるだろう。もちろん日常的に坑鬱剤を投与している我々はSSRI(脳内のシナプス間隙のセロトニンを増やすことになっている)のグループの抗鬱剤がそれほど劇的に効かないことをよく知っているのだが。
読み進めると、ここでVDK先生が書いてあることは私も何年か前に読んで、アレっと思った部分である。本書でも採録されている。それは最初のSSRIであるプロザック(日本では結局発売されず) をPTSDに使ったところ、非常に効果があったという話である。もちろんSSRIはPTSDにはよく使われるが、ここまで感動、ということはあまり私自身は体験していないのだ。