2018年7月17日火曜日

解離の本 36

非解離性の自傷(マナさん、架空の症例)の提示(略)

マナさんの自傷は、「見捨てられ不安」が刺激される場面で、彼を巻き込みながら生じていました。そのため、マナさんの自分自身を傷つけるような行為を目の当たりにした彼は、心配でそばを離れられなくなっていました。結果的に、マナさんは彼をつなぎとめておくことができました。そしてその意味ではいわゆる「二次利得(病気や症状によって得られる利益)」があったともいえるでしょう。面接を重ねていくうちに、マナさんのこうした振る舞いには、人との関係性で安心感を保持しにくい、様々な背景があることがわかってきました。
自傷の目的は、耐え難い不安の解消にあり、マナさんは、それ以外の方法がみつからないほどにひっ迫した状況にありました。ただ、結果として、彼を感情的に巻き込み、支配し、操作する、という側面も持つ、というのが、非解離性の自傷の特徴と言えます。いわゆるアクティングアウト(行動化)と呼ばれる行為も、そのようなタイプのものを指すと考えていいでしょう。それは常軌を逸脱した行為であり、周囲に迷惑をかけ、その意味でも周囲から非難される傾向にあります。
また、このタイプの自傷では痛みを伴うことが多いとされています。それゆえ、自己処罰的な意味合いを持つ一方、それ以上の苦痛を他者に与えられないようにするといった面を含んでいる場合もあると考えられます。
この様な非解離性の例をまず挙げたのは、自傷行為の一つのパターンをこれが示しているからです。そして多くの自傷行為がこの種の逸脱行為、非常識的な行為、行動化として受け止められてしまいかねないという問題があります。