2018年7月16日月曜日

解離の本 35


 自傷をどう見立てるか 

以前は自傷行為は、どちらかというと対人操作性の高い、つまり自分にとって利する方向に他者を動かそうとする行為として理解することが一般的でした。その意味で自傷を境界性パーソナリティ障害(BPD)の一症状として理解する傾向が在りました。しかし、1994年に出版されたアメリカ精神医学会の診断マニュアル4)では、BPDの診断基準に、「一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離性症状」という一文が加わることになり、それ以降、BPDにおける自傷は必ずしも操作的な行動化だけではないということが、共通の認識となりました。自傷の数多い事例経験を持つレベンクロンは、自傷のありようから、「非解離性自傷症」と「解離性自傷症」とに分類するという、ひとつの見方を提示しています6)(表1)。この「非解離性」とされる自傷が、従来のBPDで言われていた「行動化としての自傷」に近い概念にあたります。レベンクロンで示された二つのタイプの自傷が、どのように異なるのか、次に見ていきたいと思います。