2018年7月14日土曜日

解離の本 33


5.解離への偏見に立ち向かう―詐病や演技との鑑別をめぐって
  DIDと言われる人たちの中に詐病や演技が潜んでいることはないのか?という疑いをもつ人は多いことでしょう。一見疾病利得があるように見える場合はなおさらです。とはいえ、健康な人が何らかの目的のため人格交代の演技をし続けるのはそう簡単ではありません。明らかな詐病の場合は、専門家の前ではそれは早々に露呈します。
自分の知らない間に自分が行動してしまうという事実は本人にとってはかなり奇妙な出来事ですし、場合によっては極めて恐ろしく感じることもあるでしょう。そのようなことが起きているらしいということに気づいた当初は、自身でもそれを認めることができず、まして他者に打ち明けるのはかなりの勇気がいるものです。それが診断名を持つ障害であるということを専門家から告げられたとしても実感を持てないという方は少なくないでしょう。
解離性障害という診断を受け入れられないもう一つの理由は、それを自分の気持ちの弱さからくるものではないんだ」ということに後ろめたさを持つ傾向があるからです。人は「これは病気なんだ。甘えではないんだ」と考えることで、どこかにほっとする気持ちが生まれます。しかしその気持ちが今度は「自分は自分の責任を放棄しているのではないか?」という気持ちも生みます。つまり「病気であることに甘えているのではないか?」という気持ちがわくのです。その結果として解離性障害であることを受け入れがたいと感じるという現象が起きます。事実解離性障害の患者さんの多くが「自分は演技をしているのではないか? 本当は解離ではないのではないか?」という疑いを抱くものです。