2018年7月13日金曜日

解離の本 32


3.トラウマ記憶が蘇る事態
性被害など事件性のあるトラウマ体験をもつ患者さんでは、加害者の逮捕や訃報を受けて、辛い記憶を呼び覚まされることがあります。当時の体験が生々しく蘇ることで怒りや恐怖に苛まれると、時にはそれまで落ち着いていた状態が一気に悪化します。加害者が亡くなった後に、相手に怒りを突きつける機会を失ったという絶望や無力感に襲われる人もいます。加害者との接触やそれに関する情報を見聞きすることは、トラウマの再浮上につながり、患者さんを過去に引き戻すのです。
ただし幼少時に性的なトラウマを負わせていた人物が、のちになり告訴の対象となって、それを報道で知ったりすると、それが引き金になることもあります。
患者さんと加害者が以前から顔見知りで一定以上に親密であった場合には、相手に向けていた思慕や信頼を裏切れられたという傷つきで、トラウマ体験も一層深刻となります。