2018年6月24日日曜日

解離の本 28



主要メンバーとの出会い-患者さんの世界で何が起きているのか

治療が開始され、治療関係が形成されていった段階で、一体患者さんの世界で何が起きているのかを把握する必要があります。どのような主要メンバーがいて、いつどのような状況で人格の交代が起きているのか。どの人格のどのような振る舞いに問題が生じているのか。これは従来言われていたマッピングとは異なり、患者さんの中に存在する主要メンバーの動きを大まかに知るというプロセスです。
たとえばAさんが職場での仕事を担当し、比較的安定していたが、職場での上司とのトラブルからBさんという子供人格が時々出るようになってしまう。更にはAさんは過去に自殺未遂や自傷行為を引き起こす人格Cが存在するが、しばらくは姿を見せずにいる、という状況を考えよう。ここではA,B,Cという主要人格が登場していることになります。もちろんこれ以外にも時々登場する冷静な人格D、更に幼少な人格Eが存在することが明らかになるかもしれないが、今起きている問題にかかわっている人は主として、A,B,Cさんということになります。そこでセラピストとしては、これらの人々とあって話す必要が在ります。
ただしそうは言っても、たとえばCさんと出会うことは簡単にはできないでしょうし、それを急ぐことは場合によっては治療的といえない可能性も在ります。もちろん激しい行動化を繰り返す人格と接触できれば、治療の進展につながりやすくなります。特定の人格が度々自分自身を傷つけ他者への攻撃をやめない場合は、それが主人格の自覚できない情動を排出するための行動化である可能性もあります。行動する人格と感情を表現する人格が別れていることもあれば、状況全体を俯瞰する人格が存在することもあるでしょう。それぞれの人格の特徴と果たす役割を理解し、人格間の関係性を整理するマッピングを行えば、全体像を把握するのに役立ちます。