少し大脳皮質の説明にそれてしまったが、ニューラルネットワークとディープラーニングの問題を繋げて説明しよう。まずニューラルネットワークをきわめて複雑にしたものがディープラーニングシステムと言っていいであろう。入力層と出力層があり、その間に膨大な層が存在する。ニューラルネットワークでは、入力層に入ったインプットと出力層から出るアウトプットが正解に近いように、中のネットワークの重みづけが変更されて行き、正解に近づけることが出来る。そして大脳皮質もおそらく類似した構造であろうという説明をした。ではこの場合何がインプットであり、何がアウトプットだろうか? たとえば赤ん坊が目の前のもの、たとえば哺乳瓶を捉えようとする。その場合は視覚的な情報がインプットだ。そしてアウトプットは自分の手の動き(手の運動を司る筋肉運動)ということになる。もし哺乳瓶に向かって手を伸ばさずに、たとえば右側に行きすぎると、そのアプトプットは誤り、あるいはやや誤りと判断される。そしてそれを繰り返すうちに、哺乳瓶の視覚情報は、確実にそれを捉えることが出来るような手の動きを指示する出力を行うことが出来る。すると赤ん坊はこの運動に熟達するにつれて、もう哺乳瓶を見て手を伸ばすという運動を、「考えずに」出来るようになる。当たり前になり、ルーチン化した運動はもう精神的なエネルギーを用いることはない。そして脳は、まだ新しくて、それに慣れていない体験について、それを記憶し、それに対するエネルギーを注ぐだろう。そしてここに先ほどの海馬、扁桃核が関与してくる。それはある意味では大脳皮質というディープラーニングシステムを使いこなす、さらに上位の中枢の存在を示しているであろう。
そう、人間の大脳は、単なるディープラーニングを行うのではなく、それをより効率よく行うような仕組みを備えていることになる。
私はこれ以上の解説をここでは控えるし、それを行う能力もないが、脳の仕組みの少なくともその一部には、ディープラーニング的なシステムが組み込まれていることはある程度説明できたのではないかと思う。(絶対出来てないって !!!)