2018年5月12日土曜日

精神分析新時代 推敲 75


神経ダーウィニズム

 神経ダーウィニズムには2通りの考え方がある。例えば最初はこのような形になる。


 神経細胞の間には神経線維が繋がっている。そのうちの一部が繰り返し同時に刺激を受けると(図の中では、赤く光っている 4つの細胞がそれに相当する)、それらの結びつきが強く、太くなると同時に、それ以外の部分がプルーニング(枝切り)されていく。それでここだけが強化されるという形で生き残っていく。これがいわゆるヘッブの法則である。要するにいつも同時に興奮している神経細胞どうしのつながりが強化され、勝ち残っていく。これも一種のダーウィニズムである。
 ところがカルヴィン先生はこれとは別にもう一つのダーウィニズムを示している。それを以下のように説明している。まず私たちの大脳皮質の厚さはわずか 2mmであるが、そこに膨大な数の神経細胞が存在する。そしてそれを観察すると、かなり微細なコラムにより成り立っている。そのコラムは筒のような形になっていて、一つのコラムの上下で情報のやり取りが行われている。マイクロコラムが100くらい集まるともう少し大きいコラムを形成する。そして私たちの脳の皮質にこのマイクロコラムは大脳皮質の中に1億存在している言われているのだ。そしてそれらが個別にある種の情報処理を行っているということになる。そしてここからがカルヴィン先生の仮定なのだが、これらのうち一つのコラムの内容は周囲の別のコラムに次々とコピーされていくというのである。もちろん大脳皮質の限定された領域でのことであるが、そこであるコラムの内容がコピーされて領土を拡大し、別の内容の領土との間で競合を起こし、最終的に勝つものが意識レベルに上がってくるというわけである。
 

   彼はその著書でこんな絵を描いている。二つの異なるコラム (この場合は異なるメロディーを表す) が自分をコピーして領土を拡大すると、別の物との間で中間にはさまれた物が浮動票みたいな状態になる。そしてやがてどちらかに飲み込まれていく。そしてどちらかのメロディー化が生き残る。大脳皮質ではコラム間にこのような陣取り合戦が常に起きているというのである。私がこれを書いている最中に、次にどのような単語を用いようかを考えながら進めているが、私の頭の中では各瞬間にいくつかの単語の候補が現れて、その中で一番強いものが勝って口から出てくる結果といえるのである。